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日本の水道法。水質基準と浸出試験を世界一分かりやすく解説

水質基準や、浸出性能試験。またそれらを証明する資料が欲しい。
依頼されたけれど、そもそも水質基準って何?
水道の蛇口をひねればどこからでも出てくる綺麗な水。普段、何気なく使っている水道には安全で安心に使用できるための法律と規制があります。
このページでは水道法。中でも、水道水の基礎となる、「水質基準」について詳しく紹介していきます。
このページを見れば、水質基準や浸出性能試験の知っておくべき内容を全て理解していただけると思います。
部材の選定や現場での水質検査の参考にしてみてください。

目次

  1. 1.水道法と水質基準
  2. 2.水質基準に関する法令
  3. 3.水質基準項目と基準値(51項目)
  4. 4.鉛管と水道
  5. 5.鉛低減処理(Npb処理)
  6. 6.JISS3200-7:2010 水道用器具-浸出性能試験方法
  7. 7.まとめ

1.水道法と水質基準

東京都の都市人口が世界一になった1957年、我が国の水道法が施行されました。水道法の第一章第一条(この法律の目的)では、「水道の布設及び管理を適正かつ合理的ならしめるとともに、水道の基盤を強化することによって、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もつて公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを目的とする。」と記載されています。

難しい表現ですが、要約すると「清潔な水を安価にたくさん届けられる水道を、日本全国に整備し、国民の生活を改善します。」となります。

ここでポイントとなる「清潔な水」。日本の水はそのまま飲めるけど、海外では、「絶対に蛇口の水を飲まないで。」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

なぜ、日本の水はそのまま飲めるのか?日本における「清潔な飲める水」を守るためにあるのが、この水道法であり、水道法の第四条「水質基準」になります。

    【水質基準 6項目】

  • ①病原生物に汚染され、又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を含むものでないこと。
  • ②シアン、水銀その他の有毒物質を含まないこと。
  • ③銅、鉄、 弗素、フェノールその他の物質をその許容量をこえて含まないこと。
  • ④異常な酸性又はアルカリ性を呈しないこと。
  • ⑤異常な臭味がないこと。ただし、消毒による臭味を除く。
  • ⑥外観は、ほとんど無色透明であること。

この6項目の具体的な事項は「水質基準に関する省令」で別途定められていますが、上記6項目が最も基本的な水道事業者が確保する義務とされています。そのため水道水が水道基準に適合しているかを判断するため、水質の定期、臨時検査が水道事業者には義務付けられています。

2.水質基準に関する法令

厚生労働省では水道水質基準について、

「水道法第4条に基づく水質基準は、水質基準に関する省令により、定められています。水道水は、水質基準に適合するものでなければならず、水道法により、水道事業体等に検査の義務が課されています。」
「水質基準以外にも、水質管理上留意すべき項目を水質管理目標設定項目、毒性評価が定まらない物質や、水道水中での検出実態が明らかでない項目を要検討項目と位置づけ、必要な情報・知見の収集に努めています。」
とし、安全で安心して飲める水を最新の知見で随時見直しを行っています。

3.水質基準項目と基準値(51項目)

健康関連31項目

項目 基準
一般細菌 1mlの検水で形成される集落数が100以下
大腸菌 検出されないこと
カドミウム及びその化合物 カドミウムの量に関して、
0.003mg/L以下
水銀及びその化合物 水銀の量に関して、
0.0005mg/L以下
セレン及びその化合物 セレンの量に関して、
0.01mg/L以下
鉛及びその化合物 鉛の量に関して、
0.01mg/L以下
ヒ素及びその化合物 ヒ素の量に関して、
0.01mg/L以下
六価クロム化合物 六価クロムの量に関して、
0.02mg/L以下
亜硝酸態窒素 0.04mg/L以下
シアン化物イオン及び塩化シアン シアンの量に関して、
0.01mg/L以下
硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 10mg/L以下
フッ素及びその化合物 フッ素の量に関して、
0.8mg/L以下
ホウ素及びその化合物 ホウ素の量に関して、
1.0mg/L以下
四塩化炭素 0.002mg/L以下
1,4-ジオキサン 0.05mg/L以下
シス-1,2-ジクロロエチレン及び 0.04mg/L以下
トランス-1,2-ジクロロエチレン
項目 基準
ジクロロメタン 0.02mg/L以下
テトラクロロエチレン 0.01mg/L以下
トリクロロエチレン 0.01mg/L以下
ベンゼン 0.01mg/L以下
塩素酸 0.6mg/L以下
クロロ酢酸 0.02mg/L以下
クロロホルム 0.06mg/L以下
ジクロロ酢酸 0.03mg/L以下
ジブロモクロロメタン 0.1mg/L以下
臭素酸 0.01mg/L以下
総トリハロメタン 0.1mg/L以下
トリクロロ酢酸 0.03mg/L以下
ブロモジクロロメタン 0.03mg/L以下
ブロモホルム 0.09mg/L以下
ホルムアルデヒド 0.08mg/L以下

生活支障関連20項目

項目 基準
亜鉛及びその化合物 亜鉛の量に関して、
1.0mg/L以下
アルミニウム及びその化合物 アルミニウムの量に関して、
0.2mg/L以下
鉄及びその化合物 鉄の量に関して、
0.3mg/L以下
銅及びその化合物 銅の量に関して、
1.0mg/L以下
ナトリウム及びその化合物 ナトリウムの量に関して、
200mg/L以下
マンガン及びその化合物 マンガンの量に関して、
0.05mg/L以下
塩化物イオン 200mg/L以下
カルシウム、マグネシウム等(硬度) 300mg/L以下
蒸発残留物 500mg/L以下
陰イオン界面活性剤 0.2mg/L以下
項目 基準
ジェオスミン 0.00001mg/L以下
2-メチルイソボルネオール 0.00001mg/L以下
非イオン界面活性剤 0.02mg/L以下
フェノール類 フェノールの量に換算して、0.005mg/L以下
有機物(全有機炭素(TOC)の量) 3mg/L以下
pH値 5.8以上8.6以下
異常でないこと
臭気 異常でないこと
色度 5度以下
濁度 2度以下
(空白) (空白)

(令和2年4月1日施行)

4.鉛管と水道

一般細菌や大腸菌が「清潔な水」に入っていないのは分かるけど、鉛も水質基準項目なの?
そもそも鉛管(鉛製の水道管)って使われていなかった?という意見のある人はいないでしょうか?

鉛管は、管内に錆びや水垢などが付着せず、また柔軟性があり加工・修繕が容易だったことから1980年代まで日本国内で一般的に使用されている配管材料でした。しかしながら近年、鉛管は老朽化による漏水の多さ。鉛が人体に与える影響が分かる中で、使用が禁止され、かつて水道管として布設された水道用鉛管は掘り返され、水道用ポリエチレン管や塩化ビニル管で布設されなおしています。

水道水中の鉛濃度は、流水状態で使用している場合、厚生労働省が定めた基準(0.01mg/L)以下であり、健康上問題はありません。一方で、朝や旅行などで長期間留守にしていた際は、微量ながら鉛が溶け出すことが分かっていて、バケツ1杯(10-15L)を飲み水以外に利用することが推奨されています。

なお給水管は、家を建てる際に引き込み、家を建てた人(住人)の所有物になるため、各地方自治体にもよりますが、住んでいる人が費用を負担して交換工事をすることが一般的です。

■コラム:鉛の基本

鉛の原子番号82。Pb(plumbum)と表記される金属です。
融点が金属としては低い327℃で、安価で加工のしやすさから、金や銅に次いで古くから人々が利用してきました。金属ですが、酸化被膜が形成され、すぐに黒ずむ特徴があり、この酸化被膜のおかげで、腐食が金属内部に進みにくい。また水には溶けないため、水中で腐食しにくいという特徴から、ローマ時代(西暦300年ごろ)にはすでに水道用に鉛管として使用されてきました。

一方で、近年では体内に蓄積性があり、高レベル鉛を長期間曝露すると、神経、消化管、腎臓に毒性が現れ貧血や疝痛(周期的に反復する内臓痛)。重篤な場合は脳症を引き起こすことが分かっています。
健康な日本人でも15-25マイクログラム/日程度を、口から吸収していて、また血中にも1-3マイクログラム/100gあたりの鉛が含まれています。

5.鉛低減処理(Npb処理)

このように鉛が表面に露出している場合、その一部が水道水中に溶出する可能性があり、厚生労働省は2003年に水道水中の鉛の基準値が0.01ppm以下(=10ppb)へ強化しました。この数値はWHOガイドライン値と同じ値になっています。なお、1958年に初めて設定された、鉛の水質基準は0.1ppm以下。その後、1992年には0.05ppm以下と規制は強化されてきて現在に至ります。

銅合金にはすでに、鉛を含有しない鉛フリー素材を材料メーカーが開発していますが、水道用器具に多く使用されている黄銅や、青銅には快削性と鋳造性、耐圧性を改善するために過去から数%の鉛を配合してきた過去がありました。

そのため鉛入の銅合金と比較すると鉛フリー材は、加工性が悪く、特に青銅継手、青銅鋳物においては、表面処理の鉛低減処理(Npb処理)を行うことで、水質基準を満たす鉛溶出の低減が図られてきました。

【Npb処理とは】

衛生陶器メーカーのTOTO株式会社が開発した、水栓金具からの鉛浸出を低減させる技術。

2003年の水質基準における鉛溶出量の規制強化にTOTOがいち早く対応しました。
NPb処理はその後、TOTOが他の水栓メーカーへも技術供与を行ったことで、水道業界全体の鉛低減技術のスタンダードになっています。具体的な処理は銅合金に含まれる鉛の内、金属表面に付着している鉛を特殊アルカリ性溶液で溶解、除去。その後、残存する鉛に安定化処理液(リン酸系)に一定時間浸漬させ、鉛の溶出を低減させるというものです。
んー、言うは易しく、実際はとても難しい処理です。

6.JISS3200-7:2010 水道用器具-浸出性能試験方法

水道法と水質基準について、ここまで見てきました。
このパートでは、水道の蛇口。つまり私たちが直接水を飲むための金具について、水質基準項目と基準値(51項目)をどのように試験するかを定めた、日本工業規格(JISS3200-7)について解説していきます。

「浸出性能試験」について詳しく知りたい方は、この部分だけ読めば大丈夫です。

JIS S 3200-7:2010では、「水道用器具」を、水道水を人に供給するための蛇口(末端給水用具)、バルブ、継手、瞬間湯沸器(配管の途中に配置される給水用具)、給水管(給水管)として分けています。

浸出性能試験では、このページ上部で見てきた、水質基準を守るために、水道用器具に擬似水道水を満たして得られる溶出液について、水道法の水質基準、最大51の対象項目が基準を超えていないかどうか判定するために行われる試験です。
末端給水用具、配管の途中に配置される給水用具、給水管の種類により浸出液の調製方法が異なります。特に、蛇口など、末端給水用具に対する基準は厳しく、金属などは給水管等の1/10までが合格基準となっています。
例えば鉛が含まれる給水管であれば0.01mg/Lが浸出性能試験の合格範囲ですが、鉛を含む末端給水用具の場合0.001mg/Lが合格範囲になっています。

分析項目の数に応じて、金額が上がるので、味、臭気、色度、濁度以外は、水道水と接触する部分に使用されている材料成分、また材料成分の内、浸出する可能性があるものを実施すればいいことになっています。

何が分析項目かは、材料毎に規格化されていますので、素材を確認し、JISS3200-7の規格を見て、何項目分析が必要かを確認すればOKです。
一例ですが、蛇口に多く採用されている青銅(CAC406)の場合であれば、基本4項目「味、臭気、色度、濁度」+銅、亜鉛、鉛、カドミウムの分析。ステンレスSUS304、SUS316の場合であれば 基本4項目+鉄、六価クロムの分析が必要となります。

■コラム:ppm単位と換算表

試験や材料のことを知らべるとやたらとでてくるppm。ppmの意味を理解しておくと、グッと分かりやすくなるのでここではppmの単位と換算方法を紹介します。

ppm(Parts per million;パーツパーミリオン):100万分の1を表す単位

主に濃度を表すために使用し、食品添加物の濃度、金属の中の微量含有元素の組成を表すときに使用します。黄銅材料のカドミウム100ppm材の場合、素材全体を100%とした場合、0.01%カドミウム配合。ということになります。

【ppm換算表】

ppb ppm 1g中mg 分率
1 0.001 0.0000001 0.000001 1 000 000 000
10 0.01 0.000001 0.00001 100 000 000
100 0.1 0.00001 0.0001 10 000 000
1 000 1 0.0001 0.001 1 000 000
10 000 10 0.001 0.01 100 000
100 000 100 0.01 0.1 10 000
1 000 000 1 000 0.1 1 1 000
10 000 000 10 000 1 10 100
100 000 000 100 000 10 100 10
1 000 000 000 1 000 000 100 1 000 1

7.まとめ

浸出性能試験は、水質基準を満たしているかを判断する検査のため。水質基準は水道法の第四条に規定があり、水質基準の詳細には「水質基準に関する省令」がある。
一連の繋がりについて、ご理解いただけたでしょうか。どうして浸出性能試験が必要なの?となれば、きっとその材料は役所等の公共施設で特に水質検査が厳しい。と考えることができそうです。

一方で一般の戸建住宅や集合住宅で使用する、給水配管部材についてはそこまでの試験レポートは不要のはずです。ただし、一般家庭でも水質基準に満たない水が届いてはいけないので、安心・安全が保証されたメーカーの製品を使用することをおすすめします。

当社オーミヤについて

すべての青銅製品が、鉛低減処理済みの東大阪の継手メーカーです

「三方良しのモノづくり」を企業理念に、青銅、黄銅を主とする金属から、エンジニアリングプラスチック製の継手を製造販売する東大阪のメーカーです。継手の使命、それは「安全安心な水を、漏らさずに蛇口へ届けること。」
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